そして、その具体的な第一歩のステップとして、『態度育成』つまり自主的で積極的な学習態度の育成こそが学習の基本であると考えています。
人間関係と性格について前回は、過保護的な人間関係から育つ甘やかされ型とわがまま型について述べました。
前回は、まわりの人の過干渉(かかんしょう)によって育つ無気力型について述べましたが、今回は同じ過干渉によって生まれる反抗型です。
反抗型が生まれるパターン
家庭で
D君は、前回のC君と同じように共稼ぎの家庭で育ちました。忙しいお母さんに代わって一時期、父方の祖母に育てられた時期もあったのですが、おばあさんのやり方を気に入らなかったお母さんが、結局自分で育てることになりました。
多くの母親と同じように、教育熱心なお母さんは、D君を理想的な子どもに育てようと思いました。そのため教育書やテレビで得た知識をもとに色々細かいことにまで口を出します。
このあたりも、前回のC君のお母さんと同じ対応です。
D君も時々反抗するのですが、そうするとお母さんは長々と説教します。もちろんお母さんは説教などしているとは思っていません。D君の考えの足りないところを教えてあげているつもりです。しかし、D君にすれば、お母さんには理屈ではとてもかないませんから、いつも自分の考えは何も聞いてもらえず、結局お母さんの言うとおりに決まってしまいます。
こうした中で、D君はお母さんの言う通りに従う、素直ないわゆる「いい子」になっていきました。
「いい子」とは言ってもそれはお母さんから見て「親の言うとおりに素直に行動するいい子」という意味で、D君の心の中には、「いつもお母さんに言い負かされて、自分の考えどおりにやれない」という声にならない意識が心の奥に生まれ、だんだん色々なことに気力を無くしていきました。
お父さんもおとなしい人で子育てはお母さんの言いなりです。
人間は、物を作るようにはいきません。設計図をもとに模型を組み立てたり、レシピをみて料理を作るようにはいきません。たとえ親子であっても、一人の人間を自分の思うとおりに育てるなどできるものではないのですが、お母さんはこのことがわかっていなかったのです。
小学校入学前のD君はお母さんの決めたスケジュール通り、決められた洋服を着、色々なおけいこ事に通う毎日でした。
小学校で
D君が小学校に通うようになりました。
学校でのD君は、どちらかと言うと先生の言う通りに行動する従順な子どもです。低学年のうちは、担任の先生もそれほど問題はないと思っていました。
3年になって、お母さんの決めた塾へ入りました。お母さんはD君を私立中学、できれば名前の知れた中学に入れるつもりで、そのためにはそれなりの進学塾へやらなければと思ったのでした。
塾の先生はD君を指導しているうちに、妙なことに気がつきました。
それは、D君が、先生の指示したことが時々できないことでした。ここで、できないというのは問題が分からなくてできないと言うのとは違います。指示した事と違ったことをやってくると言うことです。
たとえばD君が間違った問題について、きちんと考えさせようと思って、先生が図をかいてくるように言っても図をかいてこない、「勘違いしたのだろう」ともう一度「先ほどの問題の図を描いてくるように」と言うと、「はい」と返事はするのに今度は違うページの問題をやってくる、といった具合です。
こういうことが何度もあったため、先生は、お母さんに「D君は先生の言うことをきちんと理解できないことがあります。」と言いました。驚いたお母さんは「そんなはずはない」と思いました。どうしてこんなことがおこったのでしょう。
塾で
幼児期、お母さんとの人間関係の中で、表面上人に抑えつけられ、人に従うことになれてしまったように見えるD君ですが、その深層には『人に言うとおりになるのはいやだ。人に言う通りになっていると自分が自分でなくなる。』という考えが育っていたのです。
それが、学校の先生と違って、学力向上という目的がよりはっきりしていて、それを達成させるために「何々しなさい。」というような指示命令が多くなる塾の先生に対して表に表れたのです。
だから先生が、「右向け」と言うと、無意識のうちに左を向くようなことをやるのです。自分でもなぜそうするのか分からないのに、ついそうしてしまうのです。
これが無意識の働きでやっかいなところです。
いじめのグループに
そして小学校高学年になった頃、お母さんは学校の先生からD君が、クラスの女の子をいじめているグループに入っていることを知らされました。
人から抑えつけられている人間は、その鬱憤(うっぷん)を自分より弱い人間に向けることがあります。D君も無意識のうちに、幼いときからお母さんに抑えつけられていたうっぷんを、クラスの比較的おとなしい女の子をいじめることではらしていたのです。
驚いたお母さんは、D君を強く叱りつけました。すると高学年になっていたD君は、今までに見せたことのないような反抗的な態度をとりました。
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